2024年からの新NISA制度開始に伴い、投資先として注目を集めているのが「FANG+」に連動した投資信託です。S&P500などを凌駕する爆発的なリターンが魅力ですが、その一方で、 FANG+投資には注意すべき落とし穴も存在します。
本記事では、 これからFANG+投資を検討している方や、すでに投資している方に向けて、知っておくべき5つの落とし穴と、より安全かつ効果的に資産運用するための賢い投資戦略 について詳しく解説していきます。
FANG+とは?ハイテク・グロース株で構成された投資信託
FANG+とは、アメリカのNASDAQ市場に上場する、 高い成長力を持つ10社のハイテク・グロース株で構成された株価指数 のことを指します。
FANG+を構成する10社は以下の通りです。
- Facebook(メタ・プラットフォームズ)
- Amazon.com
- Netflix
- Google(アルファベット)
- Apple
- NVIDIA
- Tesla
- Microsoft
- ASMLホールディング
- Snowflake
これらの企業は、 IT、EC、AI、半導体など、現代社会を支える最先端技術において世界的に大きな影響力を持つ企業群 です。
なぜFANG+が人気なのか?
FANG+が人気を集めている理由は、 その高い成長性と、それに伴うリターンの高さ にあります。
特に、2020年代に入ってからのコロナ禍において、 FANG+を構成する企業群は、巣ごもり需要やデジタル化の加速を背景に、軒並み業績を伸ばしてきました。 その結果、FANG+指数は、S&P500などの代表的な株価指数を大きくアウトパフォームするパフォーマンスを記録しています。
新NISAでは、非課税で投資できる期間と金額が拡大されたことから、 「少しでも高いリターンを狙いたい」 と考える個人投資家にとって、FANG+は非常に魅力的な投資対象となっているのです。
【重要】FANG+投資で損する前に知っておくべき5つの落とし穴
しかしながら、 FANG+は決して「夢の投資先」ではありません。 その魅力的なリターンの裏側には、 知っておかなければ大きな損失に繋がる可能性のある落とし穴 が潜んでいます。
以下では、FANG+投資で陥りやすい5つの落とし穴を詳しく解説していきます。
落とし穴①:積立投資枠だから長期投資に向いているは間違い!
新NISAには、「成長投資枠」と「積立投資枠」の2つの投資枠があります。
- 成長投資枠:個別株やアクティブファンドなど、幅広い商品に投資可能
- 積立投資枠:長期・積立・分散投資に適した投資信託等に投資可能
FANG+に連動する投資信託は、 このうち「積立投資枠」でも購入することができる ため、「長期投資に向いている」と誤解されがちです。
しかし、 過去のデータを見てみると、FANG+が長期投資に不向きである可能性を示唆する結果が出ています。 例えば、過去5年間のデータでは、FANG+への投資は、1ヶ月間の投資で最大-18%、1年間の投資では最大-31%もの下落を経験しています。
一方、新NISAで人気の 「全世界株式(オールカントリー)」 は、同期間において、1ヶ月間の投資で最大-1%、1年間の投資でも最大-12%の下落にとどまっています。
長期投資において重要なのは、高いリターンよりも、むしろリスクを抑え、安定した資産形成を目指すこと です。その点で、 価格変動の大きいFANG+は、長期投資の投資先としてはリスクが高い と言えます。
また、投資信託には、運用コストとして 「信託報酬」 がかかりますが、FANG+に連動する投資信託は、 オールカントリーなどに比べて信託報酬が高い 傾向にあります。長期投資になればなるほど、この信託報酬の差は大きな負担となるため、注意が必要です。
落とし穴②:FANG+の10銘柄は固定ではない!
FANG+という名前から、「Facebook(メタ)」「Amazon」「Netflix」「Google」の4社は固定で組み入れられていると勘違いしている方もいるかもしれません。しかし実際には、 FANG+を構成する10社は、定期的に見直しが行われており、構成銘柄が変わる可能性があります。
FANG+の構成銘柄の見直しは、 原則として3ヶ月に1回 行われます。具体的には、3月、6月、9月、12月の第3金曜日に、構成銘柄の入れ替えが検討されます。
直近の2023年6月の見直しでは、構成銘柄に変更はありませんでした。しかし、 今後の見直しで、現在の10社のうち、いずれかの企業が除外される可能性は十分に考えられます。
落とし穴③:銘柄入れ替えの基準が曖昧
FANG+の構成銘柄の入れ替えは、 「NASDAQ-100指数」 の構成銘柄の変更を参考に、 「時価総額」「流動性」「業種分散」 などの基準に基づいて行われるとされています。
しかし、 具体的な選定基準や入れ替えルールは明確にされていません。 過去の入れ替え実績を見ても、業績が低迷しているにも関わらず構成銘柄として残留した企業もあれば、逆に、好調な業績を維持していたにも関わらず除外された企業もあります。
このように、 FANG+の構成銘柄の入れ替えは、必ずしも合理的な判断に基づいて行われているわけではない 可能性があります。そのため、 「特定の企業に投資したい」という目的でFANG+に投資するのは避けた方が無難 です。
落とし穴④:特定の企業に投資が偏っているわけではない
FANG+は、10銘柄に対して均等に投資を行う 「均等加重平均型」 の指数を採用しています。つまり、 各銘柄への投資比率は、常に10%ずつ となります。
そのため、「NVIDIAに集中投資したいからFANG+を選ぼう」と考えている場合、注意が必要です。FANG+は、 NVIDIAの株式を30%近く保有する投資信託と比較すると、NVIDIAへの投資比率は低い と言えます。
もし、 特定の企業への投資比率を高めたいのであれば、FANG+ではなく、その企業の株式を多く保有する投資信託や、個別株への投資を検討する 必要があります。
落とし穴⑤:構成銘柄が11社になる可能性も
FANG+は、現在のところ10銘柄で構成されていますが、 将来的には構成銘柄が11社に増加する可能性があります。
これは、FANG+の選定基準となるNASDAQ-100指数において、 時価総額が大きく異なる企業間で極端な影響力の差が生じないようにするための措置 として検討されているものです。
仮に、FANG+の構成銘柄が11社になった場合、 各銘柄への投資比率は、現在の10%から約9%に低下 することになります。
【結論】FANG+への投資はおすすめしない!その理由とは?
ここまで、FANG+投資で陥りやすい5つの落とし穴について解説してきました。
結論として、 私はFANG+への投資をおすすめしません。
その理由は、以下の2点です。
- 信託報酬の高さ
- 銘柄入れ替え基準の曖昧さ
FANG+に連動する投資信託は、 他の投資信託と比較して信託報酬が高い 傾向があります。信託報酬は、投資家が投資信託を保有している限り、毎年発生するコストです。
また、 FANG+の構成銘柄の入れ替え基準が曖昧である ことから、 投資家の意図しないタイミングで構成銘柄が入れ替わり、パフォーマンスに悪影響が及ぶ可能性 もあります。
【新NISA】FANG+よりおすすめ!賢い投資戦略
では、新NISAでは、FANG+ではなく、どのような投資信託に投資すれば良いのでしょうか?
おすすめは、 「全世界株式(オールカントリー)」 や 「S&P500」 などの、 幅広い銘柄に分散投資を行う投資信託 です。
これらの投資信託は、 特定の企業やセクターへの集中投資によるリスクを抑え、長期的に安定したリターン を期待することができます。また、 信託報酬も比較的低く抑えられている ため、長期投資に適しています。
具体的には、以下の3つの投資戦略が考えられます。
1. 全世界株式(オールカントリー)をコア、FANG+をサテライト
「コア・サテライト戦略」 と呼ばれる投資手法です。
- コア:投資の中核となる、リスクが低く、安定したリターンが見込める資産
- サテライト:コアに追加投資を行い、リターンを上積みを狙う資産
この戦略では、 全世界株式(オールカントリー)などの低リスク資産をコア に、 FANG+などのハイリスク・ハイリターン資産をサテライト として位置付けます。
例えば、 投資資金全体の8割を全世界株式(オールカントリー)に、残りの2割をFANG+に投資する という方法が考えられます。
2. 個別株でFANG+銘柄に投資
FANG+に投資したいと考えている方の多くは、「FANG+に組み入れられているような、成長性の高いハイテク企業に投資したい」と考えているのではないでしょうか?
もしそうであれば、 FANG+に連動する投資信託ではなく、個別株でFANG+銘柄に投資する という方法も考えられます。
個別株投資は、投資信託と比較してリスクが高い反面、 銘柄選択を自身で行うことができる ため、 より積極的にリターンを狙いたい という方に向いています。
3. テーマ型投資信託で、成長分野に投資
「FANG+のような、成長性の高い企業に投資したいけれど、個別株投資はリスクが高い」と感じる方は、 テーマ型投資信託 での運用も検討してみましょう。
テーマ型投資信託とは、 特定のテーマ(業界や分野)に特化して投資を行う投資信託 です。例えば、「AI」「ロボット」「5G」など、 今後の成長が期待される分野に投資を行う投資信託 が数多く存在します。
テーマ型投資信託は、FANG+ほど構成銘柄が限定されていないため、 特定の企業への集中投資リスクを抑えながら、成長分野に投資 することができます。
まとめ|FANG+投資は慎重に!長期的な視点で資産形成を
今回は、新NISAで人気のFANG+投資について、知っておくべき5つの落とし穴と、より安全かつ効果的に資産運用するための賢い投資戦略について解説しました。
FANG+は高いリターンを狙える投資対象である一方、 リスクも大きい ことを理解しておく必要があります。
安易にFANG+投資に飛びつくのではなく、 自身の投資目的やリスク許容度、投資期間などを考慮した上で、慎重に投資判断を行う ようにしましょう。
新NISAは、長期的な資産形成を支援する制度です。
目先の利益にとらわれず、長期的な視点を持って、最適な投資先を選択 していきましょう。