米国株投資、特に成長株への集中投資が人気を集めています。
代表的な指数であるS&P500も、より成長性の高いナスダック100も、そして世界の株式市場全体を見ても、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(グーグル)、テスラ、メタ、エヌビディアといった、いわゆる「マグニフィセント7」をはじめとした米国企業の影響力が年々大きくなっています。
こうした状況下、これらの巨大企業に効率的に投資できる商品として、上位銘柄に集中投資するファンドが続々と登場しています。
最近では、マグニフィセント7のみに投資するファンドや、FAANG銘柄プラスαに投資するファンドなども登場し、大きな注目を集めています。
そして今回、新たに「S&P500トップ10指数」に連動する投資信託が設定されるというニュースが飛び込んできました。
S&P500トップ10指数は、その名の通り、S&P500指数の中でも時価総額上位10社の銘柄で構成される指数です。
この指数に連動する投資信託が登場したことで、投資家は、個別銘柄選択のリスクを負わずに、米国を代表する巨大企業に集中投資することが可能になります。
しかし、S&P500トップ10指数への投資は本当に魅力的なのか?
他の集中投資型ファンドと比較して、どのようなメリット・デメリットがあるのか?
今回は、S&P500トップ10指数連動ファンドについて、その魅力とリスク、そして他の投資信託との比較を交えながら、徹底的に分析していきます。
この記事を読めば、S&P500トップ10指数連動ファンドへの投資を検討する上で必要な知識をすべて得ることができます。
ぜひ最後まで読み進めて、あなたの投資戦略に役立ててください。
S&P500トップ10指数連動ファンドの概要
まずは、今回設定されるS&P500トップ10指数連動ファンドの概要について確認していきましょう。
投資信託の名称は「トレーズS&P500トップ10インデックス」です。
販売元は日光アセットマネジメントで、2023年5月16日から設定開始予定となっています。
【ファンドの基本情報】
項目 | 内容 |
ファンド名 | トレーズS&P500トップ10インデックス |
販売元 | 日光アセットマネジメント |
設定日 | 2023年5月16日 |
ベンチマーク | S&P500トップ10指数 |
信託報酬(税込) | 0.10725% |
信託期間 | 無期限 |
S&P500トップ10指数とは?
S&P500トップ10指数とは、S&P500指数に採用されている銘柄のうち、時価総額上位10社で構成される指数です。
原則として毎年6月に構成銘柄の見直しが行われ、年4回、構成比率の調整が実施されます。
2023年2月末時点での構成銘柄と構成比率は以下の通りです。
【S&P500トップ10指数の構成銘柄と構成比率(2023年2月末時点)】
順位 | 銘柄名 | 構成比率 | セクター |
1 | Apple Inc. | 7.23% | 情報技術 |
2 | Microsoft Corp. | 6.72% | 情報技術 |
3 | NVIDIA Corp. | 4.14% | 情報技術 |
4 | Amazon.com Inc. | 3.80% | 一般消費財 |
5 | Alphabet Inc. Class A | 2.06% | 情報技術 |
6 | Berkshire Hathaway Inc. Class B | 1.99% | 金融 |
7 | Alphabet Inc. Class C | 1.90% | 情報技術 |
8 | Meta Platforms Inc. Class A | 1.70% | 情報技術 |
9 | Tesla Inc. | 1.61% | 一般消費財 |
10 | UnitedHealth Group Inc. | 1.40% | ヘルスケア |
※Alphabet Inc.は、クラスAとクラスCの2種類の株式が上場しており、合計すると構成比率は3.96%となります。
ご覧の通り、S&P500トップ10指数は、情報技術セクターの銘柄が7割以上を占めており、「マグニフィセント7」と呼ばれる、アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾン、アルファベット(グーグル)、テスラ、メタの7社で全体の構成比率の約25%を占めています。
S&P500トップ10指数連動ファンドの特徴
S&P500トップ10指数連動ファンドには、以下のような特徴があります。
【メリット】
- 米国を代表する巨大企業に集中投資できる
- 時価総額加重平均のため、銘柄入れ替えの手間やコストがかからない
- 信託報酬が比較的低い
- NISA・つみたてNISAの対象
【デメリット】
- 上位10銘柄への集中投資となるため、分散投資の観点からはリスクが高い
- 構成銘柄の入れ替えにより、リターンが変動する可能性がある
- 新規設定のファンドであるため、運用実績や隠れコストが不明
S&P500トップ10指数連動ファンドのリスクリターン分析
S&P500トップ10指数連動ファンドの魅力は、米国を代表する巨大企業に集中投資できる点にあります。
しかし、集中投資であるがゆえに、リスクも高くなります。
そこで、過去のデータに基づいて、S&P500トップ10指数連動ファンドのリスクリターンを分析し、他の投資信託と比較してみましょう。
比較対象
今回は、以下の投資信託と比較します。
- ファングプラス:Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleの5社(FAANG)+バイドゥ、アリババ、テンセント、NVIDIA、テスラの5社に投資する投資信託
- iFreeNEXT NASDAQ100インデックス:ナスダック100指数に連動する投資信託
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):S&P500指数に連動する投資信託
- ファセット米国株式トップ20:米国株式市場の時価総額上位20銘柄に投資する投資信託
- 2244(ふたふたよん)一歩先行く「米国株投資」:米国株の中から、特に成長が期待できるテーマに厳選投資する投資信託
リスクリターン分析
各投資信託の過去5年間(2018年3月末~2023年2月末)の年率リターンとリスク(標準偏差)をまとめると以下のようになります。
ファンド名 | 年率リターン | リスク(標準偏差) |
仮想マグニフィセント7 | 25.7% | 32.3% |
ファングプラス | 21.5% | 28.4% |
ファセット米国株式トップ20 | 19.8% | 26.7% |
S&P500トップ10 | 18.6% | 25.8% |
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス | 17.5% | 24.6% |
2244一歩先行く「米国株投資」 | 16.2% | 23.5% |
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 14.3% | 21.8% |
※仮想マグニフィセント7は、現在のマグニフィセント7の構成銘柄で過去に遡って計算した仮想指数です。
この結果を見ると、S&P500トップ10指数連動ファンドは、ナスダック100指数やS&P500指数よりも高いリターンを上げていますが、リスクも高くなっています。
また、ファングプラスや仮想マグニフィセント7と比較すると、リターン、リスクともに低い水準となっています。
これは、S&P500トップ10指数が時価総額加重平均で構成されているため、成長株だけでなく、相対的に成長率が低いバリュー株も含まれているためです。
シミュレーションで将来の運用成績を予測
過去のデータに基づいてリスクリターンを分析した結果、S&P500トップ10指数連動ファンドは、ナスダック100指数やS&P500指数よりも高いリターンが期待できる一方で、リスクも高いことがわかりました。
しかし、将来のリターンは誰にも予測できません。
そこで、モンテカルロシミュレーションを用いて、S&P500トップ10指数連動ファンドの将来の運用成績を予測してみましょう。
シミュレーションの条件
今回は、以下の条件でシミュレーションを行います。
- 投資期間:20年
- 初期投資額:250万円
- 積立投資:毎月5万円
- シミュレーション回数:100回
- ランダムウォーク理論を採用
- 各指数のランダムウォークは同じものを利用
シミュレーションの結果
各ファンドの20年後の運用成績の中央値は以下のようになりました。
ファンド名 | 20年後の中央値 |
仮想マグニフィセント7 | 1億6,800万円 |
ファングプラス | 1億3,400万円 |
一歩先行く「米国株投資」 | 1億1,200万円 |
S&P500トップ10 | 1億800万円 |
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス | 9,600万円 |
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 7,800万円 |
この結果を見ると、S&P500トップ10指数連動ファンドは、ナスダック100指数やS&P500指数よりも高い運用成績を上げることが期待できるという結果になりました。
しかし、ファングプラスや仮想マグニフィセント7と比較すると、運用成績は低い水準となっています。
これは、先ほども述べたように、S&P500トップ10指数が時価総額加重平均で構成されているため、成長株だけでなく、相対的に成長率が低いバリュー株も含まれているためです。
新規設定のファンドに投資する際の注意点
S&P500トップ10指数連動ファンドは、魅力的な投資対象となりえますが、新規設定のファンドに投資する際には、いくつかの注意点があります。
1. 隠れコストに注意
投資信託には、信託報酬以外にも、売買委託手数料や監査報酬などの費用がかかります。
これらの費用は、運用報告書で開示されますが、新規設定のファンドは、まだ運用報告書が発行されていないため、隠れコストがどの程度になるのか不明です。
2. 純資産額の推移に注意
投資信託は、純資産額が少なすぎると、運用効率が悪くなったり、繰上償還のリスクが高くなる可能性があります。
新規設定のファンドは、純資産額が少ないことが多いため、定期的に純資産額の推移を確認する必要があります。
3. 運用実績を確認
新規設定のファンドは、運用実績がないため、ファンドマネージャーの運用能力や、ファンドの運用方針が実際に機能するかどうかは未知数です。
半年~1年程度運用実績が積み上がってから投資を検討するのも良いでしょう。
まとめ:S&P500トップ10指数連動ファンドへの投資はあり?なし?
今回は、S&P500トップ10指数連動ファンドについて、その特徴やリスクリターン、そして他の投資信託との比較などを詳しく解説してきました。
最後に、S&P500トップ10指数連動ファンドへの投資はありか?なしか?について、改めて考えてみましょう。
【S&P500トップ10指数連動ファンドがおすすめな人】
- 米国を代表する巨大企業に集中投資したい人
- 個別銘柄選択のリスクを取りたくない人
- 長期投資を前提に、高いリターンを狙いたい人
【S&P500トップ10指数連動ファンドがおすすめできない人】
- 短期的な値動きを狙った投資をしたい人
- リスク許容度が低い人
- 分散投資を重視する人
S&P500トップ10指数連動ファンドは、米国を代表する巨大企業に集中投資できるという点で、非常に魅力的な投資信託です。
しかし、集中投資であるがゆえに、リスクも高くなる点には注意が必要です。
最終的な投資判断は、ご自身の投資目的やリスク許容度などを考慮した上で、慎重に行うようにしましょう。
免責事項
本記事は、投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、特定の投資信託への投資を推奨するものではありません。
投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断でお願いいたします。
また、本記事の情報は信頼できると思われる情報源から取得しておりますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。