「老後の生活資金2,000万円問題」や年金制度への不安から、将来に向けて資産形成を始める人が増えています。
確定拠出年金(iDeCo/企業型DC)は、そんな老後資金の準備に有効な制度です。
しかし、iDeCo/企業型DCは長期間にわたる運用になるため、「途中で運用内容を見直す必要があるの?」「投資先や配分はどうやって変更すればいいの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、iDeCo/企業型DC運用におけるスイッチングと配分変更について詳しく解説します。
具体的には、以下の内容を解説していきます。
- スイッチング・配分変更の仕組み
- スイッチング・配分変更のメリット・デメリット
- スイッチング・配分変更の手続き方法
- スイッチング・配分変更のタイミングと注意点
- 資産を増やすスイッチング方法
- 資産を守るスイッチング方法
- NISAとの違い
iDeCo/企業型DCを運用中の方や、これから始めようと考えている方は、ぜひ最後まで読んで、老後資金を賢く増やし守る方法をマスターしましょう!
なぜiDeCo/企業型DCではスイッチング・配分変更が重要なのか?
iDeCo/企業型DCは、老後資金を準備するための長期的な資産形成制度です。そのため、運用期間は10年以上、場合によっては20年、30年と非常に長期間にわたります。
長期間運用するということは、その間に経済状況や市場環境が大きく変化する可能性も高いということです。
例えば、以下のような変化が考えられます。
- 世界経済の成長鈍化
- インフレ率の上昇
- 金利の上昇
- 株式市場の暴落
このような変化が起こると、当初設定した投資先や配分が最適ではなくなり、運用成績が悪化してしまう可能性があります。
そこで重要になるのが、スイッチングや配分変更です。
スイッチングや配分変更を行うことで、変化する市場環境に合わせて運用内容を見直し、リスクをコントロールしながら、より効率的に資産形成を進めることができます。
スイッチング・配分変更の仕組み
リバランスとは?
スイッチングと配分変更を理解する上で、まず知っておきたいのが「リバランス」という考え方です。
リバランスとは、投資ポートフォリオ(複数の投資対象の組み合わせ)のバランスを調整することを指します。
iDeCo/企業型DCで運用を行う場合、通常は複数の投資信託を組み合わせて運用します。
例えば、株式と債券に6:4の比率で投資する場合、株式が値上がりして比率が7:3になった場合、株式の一部を売却して債券を買い増し、元の6:4の比率に戻す作業がリバランスです。
リバランスを行う主な目的は、以下の2つです。
- リスクの抑制: 特定の資産に投資が偏ることでリスクが集中することを防ぎます。
- 収益の安定化: 値上がりした資産を売却し、値下がりした資産を買い増すことで、安定的な収益を目指します。
スイッチングと配分変更
iDeCo/企業型DCでリバランスを行うための手段として、スイッチングと配分変更の2つがあります。
- スイッチング: 過去に積み立てた資産を売却し、別の商品に買い替えること
- 配分変更: 今後積み立てる掛金を、どの商品にどれくらいの比率で投資するかを変更すること
スイッチングと配分変更は、それぞれ以下のような特徴があります。
手続き | 対象 | 手数料 | 非課税 | タイミング |
スイッチング | 過去に積み立てた資産 | 無料 | 非課税 | いつでも可能 |
配分変更 | 今後の掛金 | 無料 | 適用外 | いつでも可能 |
スイッチングは、過去の投資の見直し、配分変更は今後の投資の見直しを行うための手続きといえます。
NISAとの違い
iDeCo/企業型DCのスイッチングは、NISA(少額投資非課税制度)と比較されることが多いです。
NISAとiDeCo/企業型DCのスイッチングの大きな違いは、非課税枠です。
- iDeCo/企業型DC: スイッチングに非課税枠はありません。
- NISA: 年間の非課税投資枠が決まっており、その枠を超えて売却・購入する場合、課税対象となります。
つまり、iDeCo/企業型DCでは、非課税枠を気にせず、自由にスイッチングを行うことが可能です。
スイッチング・配分変更のメリット・デメリット
メリット
スイッチングと配分変更には、以下のようなメリットがあります。
- 市場環境の変化に対応できる
- リスクをコントロールできる
- 手数料が無料
- 確定拠出年金では非課税で切り替えられる
特に、確定拠出年金におけるスイッチングの非課税メリットは非常に大きいです。
通常、投資信託を売却する際には利益に対して約20%の税金がかかりますが、確定拠出年金ではスイッチングによる売却益は非課税となります。
デメリット
スイッチングと配分変更には、以下のようなデメリットもあります。
- スイッチングには信託財産留保額が発生する場合がある
- 手続きに時間がかかる
- 頻繁なスイッチングは非効率
信託財産留保額とは、スイッチングを行う際に、売却する投資信託の運用会社に支払う手数料のようなものです。すべての投資信託に設定されているわけではなく、設定されている場合でも、その金額は資産残高の0.3%程度と少額です。
手続きには数日かかるため、その間は投資ができない状態となります。
頻繁にスイッチングを行うと、信託財産留保額や機会損失が発生する可能性があるため、注意が必要です。
スイッチング・配分変更の手続き方法
スイッチングと配分変更の手続きは、主に以下の3つの方法で行うことができます。
- インターネット: 運用会社のウェブサイトから手続きを行う
- 郵送: 運用会社から送付される書類に必要事項を記入し、郵送で手続きを行う
- 電話: 運用会社のコールセンターに電話で手続きを行う
多くの運用会社では、インターネットで手続きを行うことができます。インターネットであれば、24時間いつでも手続きが可能です。
郵送や電話で手続きを行う場合は、運用会社の営業時間内に手続きを行う必要があります。
スイッチング・配分変更のタイミングと注意点
タイミング
スイッチングと配分変更を行うタイミングは、特に決まっていません。
しかし、以下のタイミングで行うのが一般的です。
- 運用開始時: 最初に投資先や配分を決める
- 定期的な見直し: 1年に1回程度、運用状況や市場環境に合わせて見直しを行う
- ライフイベント発生時: 結婚、出産、転職など、ライフイベントに合わせて見直しを行う
- 市場環境の急激な変化時: 株式市場の暴落など、市場環境が急激に変化した時
注意点
スイッチングと配分変更を行う際の注意点は、以下の通りです。
- 投資目標やリスク許容度を再確認する: スイッチングや配分変更を行う前に、自身の投資目標やリスク許容度を再確認しましょう。
- 長期的な視点で考える: 短期的な値動きにとらわれず、長期的な視点で投資先や配分を決めましょう。
- 分散投資を心がける: 特定の資産に集中投資せず、複数の資産に分散投資しましょう。
- 手数料や信託財産留保額を確認する: スイッチングを行う際には、手数料や信託財産留保額を確認しましょう。
- 頻繁なスイッチングは避ける: 頻繁にスイッチングを行うと、手数料や機会損失が発生する可能性があるため、注意が必要です。
資産を増やすスイッチング方法
スイッチングは、単に投資先を変えるだけでなく、資産を増やすことも可能です。
低コスト商品への切り替え
投資信託には、運用コストとして「信託報酬」というものがかかります。信託報酬は、運用会社に支払う手数料のようなものです。
信託報酬は、運用成績に直接影響を与えるため、できるだけ低い商品を選ぶことが重要です。
スイッチングを利用して、信託報酬の高い商品から低い商品に切り替えることで、コストを抑えながら運用することができます。
成長性が高い商品への切り替え
長期的には、株式の方が債券よりも高いリターンが期待できます。
若い年代の方であれば、リスク許容度も高いため、スイッチングを利用して、債券中心のポートフォリオから株式中心のポートフォリオに切り替えることで、より高いリターンを目指せる可能性があります。
分散投資の徹底
1つの商品に集中投資するよりも、複数の商品に分散投資する方が、リスクを抑えながら安定的なリターンを得やすくなります。
スイッチングを利用して、特定の地域や資産に偏ったポートフォリオから、より分散されたポートフォリオに切り替えることで、リスクを低減することができます。
資産を守るスイッチング方法
老後が近づくにつれて、リスク許容度は低下していきます。
そのため、退職が近づいてきたら、スイッチングを利用して、資産を守るための対策を講じる必要があります。
元本確保型商品への切り替え
元本確保型商品とは、元本が保証されている商品のことを指します。
代表的な元本確保型商品としては、定期預金や個人向け国債などがあります。
元本確保型商品は、リターンは低いものの、元本割れのリスクがないため、老後資金を守るためには有効な手段です。
債券の割合を増やす
株式は、債券よりも価格変動が大きいため、老後が近づくにつれて、株式の割合を減らし、債券の割合を増やしていくのが一般的です。
債券は、株式よりもリターンは低いものの、価格変動が小さいため、老後資金を守るためには有効な手段です。
定期的な見直しと調整
市場環境は常に変化するため、定期的にポートフォリオを見直し、必要に応じてスイッチングや配分変更を行うことが重要です。
特に、退職が近づいてきたら、より慎重に運用状況を確認し、リスクを抑えた運用に切り替えていきましょう。
まとめ
iDeCo/企業型DCの運用において、スイッチングと配分変更は、非常に重要な役割を果たします。
- スイッチング: 過去の運用内容を見直す
- 配分変更: 今後の運用内容を見直す
スイッチングや配分変更を適切に行うことで、変化する市場環境に対応し、リスクをコントロールしながら、効率的に老後資金を準備することができます。
ただし、スイッチングや配分変更にはメリットだけでなく、デメリットや注意点も存在します。
本記事で解説した内容を参考に、ご自身の投資目標やリスク許容度に合わせて、適切なタイミングでスイッチングや配分変更を行い、老後の豊かな生活を目指しましょう!
みなさまに選ばれてNo.1