2023年9月27日、自民党総裁選で石破氏が新総裁に選出されました。
この結果を受け、金融市場は大きく反応。
わずか数分の間にドル円は3円も円高になるなど、パニック的な様相となりました。
「日本は終わった…」
SNS上では、このような悲観的なコメントが飛び交い、投資家の間には不安が広がっています。
特に、2024年から始まる新NISA制度を利用して資産形成を考えていた方にとっては、今回の石破ショックは大きな不安材料と言えるでしょう。
一体なぜ、石破氏が新総裁になると円高株安になるのか?
そして、今後の日本経済はどうなるのか?
私たち投資家は、この状況下でどのような資産運用戦略を立てていけば良いのか?
この記事では、これらの疑問に答えるべく、石破ショックの真相と今後の見通し、そして投資戦略について詳しく解説していきます。
9月27日:歓喜から絶望へ… 石破ショックで市場はパニック状態に!
9月23日の週は、日本中が自民党総裁選の行方に注目していました。
金融緩和や財政出動を積極的に進めてきた安倍政権の経済政策「アベノミクス」を継承するとされた高市早苗氏が有力視される中、市場は円安・株高傾向で推移。8月に起きた株価暴落から復活する兆しを見せていました。
特に、9月26日は多くの企業で配当金や株主優待の権利確定日を迎えたため、翌27日の権利落ち日には株価が下落すると思われていました。
しかし、ふたを開けてみれば、午後は大きく上昇。
日銀の金融政策決定会合前の水準まで回復するなど、日経平均株価は順調に上昇を続けていました。
ドル円相場も、9月に入ってから円安傾向が継続。FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策決定会合までは円高傾向でしたが、9月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.5%の大幅利下げが決定されると、状況は一変します。
日銀の政策決定会合でも時間的猶予があるという植田和男総裁の発言を受け、「日銀は急いで利上げをする可能性は低い」という安心感から円安傾向が強まりました。
さらに、総裁選で有力視されていた高市氏が「(現在の状況での)利上げはアホだ」と発言するなど、日銀を牽制する姿勢を見せたことも、円安を後押ししました。
「もしかしたら、しばらくの間は利上げはないかもしれない…」
市場関係者の間では、そんな期待感すら漂い始めていました。
そして迎えた9月27日。この日を境に、市場は大きく動き出します。
午前中は、第1回目の投票で1位となった高市氏が勝利するのではないかという期待感から、円安・株高で推移。日経平均株価は1日で900円以上も上昇し、ドル円相場も一時146円台まで円安が進みました。
しかし、午後3時過ぎ、決選投票の結果が判明すると、事態は一変します。
新総裁に選出されたのは、なんと石破氏!
この瞬間、ドル円相場と株式相場は、まるでジェットコースターのように真逆の方向へと動き出しました。
わずか数分の間に、ドル円相場は146円台から143円台へと急落。3円もの円高が進行するという、まさにパニック的な展開となりました。
日経平均株価も大幅に下落。一時2,000円以上も値を下げる場面があり、取引が停止される事態にまで発展しました。
SNS上では、「#石破ショック」というハッシュタグがトレンド入り。
「日本は終わった」
「金融所得課税や法人税増税で、日本経済は壊滅する」
「新NISAで積み立て投資を始めたけど、もう諦めた方がいいのか…」
など、悲観的なコメントが溢れかえりました。
なぜ円高になったのか? 石破氏の金融政策を読み解く
石破氏が新総裁に選出されたことで、なぜこれほどまでに円高が進んだのでしょうか?
その最大の理由は、石破氏が「円高容認」のスタンスをとっていると考えられているからです。
石破氏は、総裁選前から「金利のある世界で物価上昇抑制を目指す」という発言を繰り返してきました。
一般的に、金利が上がると預金や債券の魅力が増すため、その国の通貨を買おうとする人が増えます。
つまり、円高方向に進むことになります。
一方、金利が低い状態が続くと、通貨の価値は下落しやすくなります。
これが、アベノミクスによって長年続いてきた円安の背景です。
石破氏は、アベノミクスによる異次元金融緩和の出口戦略として、「段階的に金利を引き上げていく」というシナリオを描いていると見られています。
実際に、石破氏はロイター通信のインタビューの中で、「金融緩和という基本的政策を変えない中で、徐々に金利のある世界を実現していくのが正しい政策だ」と発言しています。
つまり、石破政権下では、遅かれ早かれ金利引き上げ、そして円高が進む可能性が高いと言えるでしょう。
特に、2023年は日本にとって約20年ぶりのインフレに突入した年です。食料品やエネルギー価格の高騰など、家計への負担は日に日に増しており、政府としても早急な対策が求められています。
石破氏としては、金利を引き上げることで物価上昇を抑制し、国民生活を守りたいという思惑もあるのでしょう。
しかし、金利の引き上げは、経済全体に大きな影響を与えるため、慎重に進める必要があります。
金利が上がると、企業は設備投資や事業拡大のための資金調達コストが増加するため、投資意欲が減退する可能性があります。
また、個人にとっても、住宅ローンや自動車ローンの金利負担が増加するため、消費が冷え込む可能性もあります。
金利の引き上げは、物価上昇の抑制というメリットがある一方で、経済活動を停滞させるリスクも孕んでいるのです。
石破氏率いる新政権は、この難しい舵取りを迫られることになります。
なぜ株安になったのか? 市場が懸念する「石破リスク」とは?
石破氏が新総裁に就任すると、なぜこれほどまでに株価が下落したのでしょうか?
その理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- 円高による企業業績悪化懸念
- 金融所得課税強化への警戒感
- 法人税増税による企業収益悪化懸念
1. 円高による企業業績悪化懸念
まず、1つ目の理由である「円高による企業業績悪化懸念」について解説します。
日本企業の多くは、自動車や電化製品などを海外に輸出することで収益を上げています。
円高になると、海外で販売する製品の価格が相対的に高くなってしまうため、販売競争で不利になります。
また、海外で得た収益を円に換算する際に、目減りしてしまうというデメリットもあります。
そのため、円高は輸出企業を中心に、企業業績を悪化させる要因として警戒されています。
特に、近年は中国経済の減速や米中貿易摩擦など、世界経済の先行き不透明感が高まっていることから、企業業績に対する円高の影響はより深刻化すると懸念されています。
2. 金融所得課税強化への警戒感
2つ目の理由である「金融所得課税強化への警戒感」について解説します。
石破氏は、総裁選前から「金融所得課税の強化」について言及しており、市場関係者の間では警戒感が高まっていました。
金融所得課税とは、株式や債券などの金融資産で得た利益(売却益や配当金など)に課せられる税金のことです。
日本では現在、金融所得課税は一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の分離課税となっています。
しかし、石破氏は「所得再分配機能の強化」を訴えており、高所得者層の金融所得課税を引き上げる可能性を示唆しています。
もし、金融所得課税が引き上げられれば、投資家の手取りが減ってしまうため、株式市場への資金流入が鈍化する可能性があります。
特に、富裕層や機関投資家など、多額の資金を運用している投資家ほど、金融所得課税の引き上げによる影響は大きいため、株式市場全体の売却圧力が高まる可能性も懸念されています。
3. 法人税増税による企業収益悪化懸念
3つ目の理由である「法人税増税による企業収益悪化懸念」について解説します。
石破氏は、総裁選前から「社会保障財源の確保」を目的とした「法人税増税」の可能性にも言及しています。
法人税とは、企業の所得に対して課せられる税金のことです。
日本では現在、法人税の実効税率(企業が実際に負担する税率)は、約29.74%となっています。
しかし、石破氏は「国民負担の公平性の観点」から、法人税の実効税率を引き上げる可能性を示唆しています。
もし、法人税が増税されれば、企業の税負担が増加し、収益が悪化する可能性があります。
その結果、企業の投資意欲が減退したり、賃金の上昇が抑制されたりする可能性も懸念されています。
石破ショックは日本経済にどんな影響を与えるのか?
石破氏が新総裁に就任したことで、日本経済にはどのような影響があるのでしょうか?
ここでは、考えられるシナリオをいくつかご紹介します。
シナリオ1:円高・デフレの進行
石破氏が「円高容認」のスタンスを貫き、金融緩和からの出口戦略を急ぐようなことがあれば、円高・デフレが進行する可能性があります。
円高は、輸出企業の収益を悪化させ、国内経済を冷え込ませる要因となります。
また、デフレは、物価下落によって企業収益や賃金が減少する現象であり、消費や投資を抑制する要因となります。
もし、円高・デフレが進行すれば、日本経済は長期にわたる停滞に陥る可能性も否定できません。
シナリオ2:財政健全化の進展
石破氏は、総裁選前から「財政健全化」の重要性を訴えてきました。
もし、石破氏が財政健全化を最優先に政策を進めていくのであれば、日本経済は長期的に安定成長を遂げる可能性があります。
財政健全化とは、政府の借金である国債の発行を抑制し、財政赤字を削減することです。
日本は、先進国の中でも突出した財政赤字を抱えており、財政健全化は喫緊の課題となっています。
石破氏が、歳出削減や増税などの痛みを伴う改革を断行し、財政健全化を達成することができれば、日本の財政に対する信認は高まり、長期金利の低下や円高の是正につながる可能性があります。
その結果、企業の投資意欲が向上し、日本経済は長期的に安定成長を遂げる可能性があります。
シナリオ3:政治の混乱による経済停滞
石破氏は、自民党内では「反主流派」とされており、党内基盤は強固ではありません。
もし、石破氏が党内からの反発を抑えきれず、政権運営が不安定化すれば、日本経済は停滞する可能性があります。
政治の混乱は、企業の投資意欲を減退させ、経済活動を停滞させる要因となります。
また、海外からの信頼を失墜させ、円安や株安を招く可能性もあります。
石破氏には、強力なリーダーシップを発揮し、党内外の意見をまとめながら、安定した政権運営を行うことが求められます。
今後の資産運用はどうする? 石破ショックを乗り切るための3つの戦略
石破ショックを受け、今後の資産運用はどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、石破ショックを乗り切るための3つの資産運用戦略をご紹介します。
戦略1:円高メリット銘柄に投資
石破政権下では、円高が進行する可能性が高いと予想されます。
そこで、円高の恩恵を受けやすい銘柄に投資することで、資産を守りながら着実に増やすことを目指します。
円高メリット銘柄とは、以下のような特徴を持つ企業です。
- 原材料や部品を輸入に頼っている企業
- 海外に製造拠点を持ち、現地通貨建てで売上を計上している企業
これらの企業は、円高によって輸入コストが低下したり、海外収益の円換算額が増加したりするため、業績が向上する傾向にあります。
具体的には、以下のような業種・企業が挙げられます。
- 商社: 三菱商事、伊藤忠商事など
- 食品: 味の素、日清食品ホールディングスなど
- 医薬品: 武田薬品工業、アース製薬など
- 電気・ガス: 東京電力ホールディングス、大阪ガスなど
- 航空: ANAホールディングス、JALなど
これらの銘柄に投資することで、円高リスクをヘッジしながら、安定的なリターンを目指せる可能性があります。
戦略2:分散投資でリスクを抑える
特定の資産や地域に集中して投資すると、その資産や地域で問題が発生した場合、大きな損失を被る可能性があります。
そこで、複数の資産に分散して投資することで、リスクを分散させ、安定的なリターンを目指します。
具体的には、以下のような資産に分散投資することを検討します。
- 国内株式
- 外国株式
- 国内債券
- 外国債券
- 不動産
- コモディティ(金、原油など)
それぞれの資産は、異なる経済状況や市場環境に影響を受けるため、分散投資を行うことで、特定の資産の値動きに左右されにくいポートフォリオを構築することができます。
戦略3:長期投資で着実に資産形成
短期間で大きな利益を得ようとして、頻繁に売買を繰り返すと、取引コストがかさみ、結果的にリターンが低下する可能性があります。
そこで、長期的な視点で投資を行い、時間をかけて着実に資産を形成していくことを目指します。
長期投資のメリットは、以下の点が挙げられます。
- 複利効果
- リスクの低減
- 心理的な負担軽減
複利効果とは、投資によって得られた利益を再投資することで、雪だるま式に資産が増えていく効果のことです。
また、長期的に見ると、短期的には大きく変動する株式市場も、右肩上がりに成長していく傾向があります。
そのため、長期投資は、短期的な価格変動リスクを抑えながら、安定的なリターンを得るための有効な手段と言えるでしょう。
まとめ:石破ショックを乗り切るために、今できること
石破氏が新総裁に選出されたことを受け、金融市場は大きく動揺し、投資家の間には不安が広がっています。
しかし、悲観的になる必要はありません。
石破政権の政策や世界経済の動向を注視しながら、冷静に状況を判断し、適切な投資戦略を立てることが重要です。
具体的には、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 情報収集: 石破政権の政策や世界経済の動向に関する情報を収集し、常に最新の情報に基づいて投資判断を行いましょう。
- リスク管理: 分散投資や長期投資など、リスクを抑えた投資手法を取り入れることで、資産を守りながら着実に増やせるように心がけましょう。
- プロの活用: 投資の専門家であるファイナンシャルプランナーなどに相談し、自分に最適な投資プランを検討するのも良いでしょう。
石破ショックを乗り越え、将来の安心を実現するために、今からできることを始めましょう。