「投資を始めたいけど、まとまったお金がある場合は一括投資と積み立て投資どっちがいいんだろう…?」
投資初心者なら誰もが抱く疑問ですよね。
投資に関する情報を集めていると、**「ドルコスト平均法」**という言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか?
ドルコスト平均法とは、毎月一定額を機械的に積み立て投資していく方法のことです。
投資初心者の多くは、リスクを抑えるためにドルコスト平均法で積み立て投資を始めるケースが多いと思います。
しかし実際には、インデックス投資の世界では一括投資の方が合理的であるという見解が有力視されています。
今回は、一括投資と積み立て投資のメリット・デメリットを比較し、結局どちらが投資初心者にとって最適な投資方法なのか、専門家の意見を交えながら徹底解説していきます。
一括投資とは?メリット・デメリットを解説
一括投資の定義
一括投資とは、その名の通りまとまった資金を一度に投資する方法です。
例えば、100万円分の投資信託を一度に購入するようなイメージですね。
一括投資のメリット
一括投資には、主に以下のようなメリットがあります。
- 複利効果を最大限に活用できる
投資の世界では、複利効果と呼ばれる雪だるま式に資産が増えていく現象が発生します。
複利とは、運用で得た利益を元本に組み入れて再投資することで、さらに大きな利益を生み出していく仕組みです。
一括投資では、投資資金すべてが投資を始めたその時からフル稼働するため、複利効果を最大限に活用できるというメリットがあります。
- 長期的に見るとリターンが大きくなりやすい
複利効果を最大限に活用できるということは、長期的な運用で大きなリターンを獲得できる可能性が高くなるということです。
特に、右肩上がりの上昇トレンドが続く相場では、一括投資の方が積み立て投資よりも大きなリターンを獲得できる可能性が高くなります。
一括投資のデメリット
一方で、一括投資には以下のようなデメリットも存在します。
- 投資直後に暴落が来ると損失が大きくなる
一括投資は、投資タイミングによってリターンの振れ幅が大きくなるという特徴があります。
投資スタート直後に大きな値上がりを記録すれば大きな利益を獲得できますが、逆に投資直後に暴落が来てしまうと大きな損失を抱えてしまうリスクがあります。
- 精神的な負担が大きい
投資直後の暴落による損失は、投資初心者にとって大きな精神的ダメージとなる可能性があります。
そのため、「今投資して本当に大丈夫なのだろうか…」という不安から、なかなか投資に踏み切れない人も多いのではないでしょうか。
積み立て投資とは?メリット・デメリットを解説
積み立て投資の定義
積み立て投資とは、定期的に一定金額ずつ投資していく方法です。
毎月3万円ずつS&P500に連動するインデックスファンドを購入する、といったイメージですね。
代表的な積み立て投資としては、つみたてNISAが挙げられます。
積み立て投資のメリット
積み立て投資には、以下のようなメリットがあります。
- 少額から始められる
一括投資と比較して、少額から投資を始められる点が大きなメリットです。
毎月数千円、数万円程度から積み立て投資を始められるため、まとまった資金がない投資初心者でも気軽に投資にチャレンジできます。
- 心理的な負担が少ない
積み立て投資は、投資タイミングを分散できるため、一括投資と比較して価格変動リスクが低く、精神的な負担も少なくなります。
投資スタート直後に暴落が来ても、追加投資資金で安く購入できるチャンスと捉えることができるため、比較的冷静に投資を継続しやすいでしょう。
- 投資を習慣化しやすい
毎月決まった日に一定額を自動的に積み立てていくため、投資を習慣化しやすい点もメリットです。
一度設定してしまえば、あとはほったらかしでOKなので、手間がかからない点も魅力です。
積み立て投資のデメリット
一方で、積み立て投資には以下のようなデメリットも存在します。
- 機会損失が発生する
積み立て投資は、長期的にコツコツ投資していく方法なので、一括投資と比較して短期間で大きなリターンを出すことは難しいでしょう。
特に、右肩上がりの相場では、投資資金をすべて投資に回せていない期間の機会損失が発生してしまうというデメリットがあります。
一括投資と積み立て投資、結局どっちがいいの?専門家の意見を参考に解説
ここまで、一括投資と積み立て投資のメリット・デメリットをそれぞれ解説しました。
ここからは、投資の専門家の意見を参考にしながら、結局どちらの投資方法が投資初心者にとって最適な選択なのかを深掘りしていきます。
専門家4人の見解を紹介!
今回参考にさせて頂く専門家は以下の4名です。
- バンガード社
- 山崎 元 氏(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員)
- バート・マルキール 氏(「ウォール街のランダム・ウォーカー」著者)
- JL コリンズ 氏(「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」著者)
世界最大級の資産運用会社であるバンガード社をはじめ、日本を代表する経済評論家、インデックス投資のレジェンド的存在など、いずれも投資の世界では非常に著名な人物です。
これらの専門家は、「一括投資か、それとも積み立て投資か」という永遠のテーマに対して、それぞれどのような見解を示しているのでしょうか?
早速見ていきましょう。
1. バンガード社の見解
インデックスファンドの代名詞とも言えるバンガード社は、以下の見解を示しています。
「一括投資の方が賢明。できる限り早く資産配分を完了させるのが合理的」
バンガード社は、長期的に見ると株式への投資はプラス収益で報われる可能性が高いと考えているようです。
そして、現金はリターンが低いため、現金のまま保有していると機会損失が発生してしまいます。
そのため、できる限り早く目標とする資産配分を実現するために、まとまった資金がある場合は一括投資した方が良い、というのがバンガード社の見解です。
ただし、バンガード社はリスク許容度の重要性についても言及しています。
リスク許容度とは、「投資でどれくらいの損失までなら耐えられるか」という、投資家自身の精神的な許容範囲のことです。
例えば、300万円の資金があり、100万円までの損失なら耐えられるというリスク許容度であれば、200万円を株式に投資し、100万円を現金で保有する、といった形で理想的な資産配分を実現できます。
つまり、リスク許容度の範囲内で、できるだけ早く理想的な資産配分を構築すべきであるというのが、バンガード社の主張と言えるでしょう。
2. 山崎 元 氏の見解
日本の個人投資家に人気の経済評論家である山崎 元 氏は、ドルコスト平均法について以下のように述べています。
「ドルコスト平均法は本当に有利で優れた投資方法なのだろうか?筆者(山崎 元 氏)は、大いに疑問だ」
山崎氏は、ドルコスト平均法は**「投資で重要なのは、これまでの積み上がったポジションがさらされているリスクと期待リターンである」**という点を軽視していると指摘しています。
ドルコスト平均法は、投資開始直後に暴落が来ても「追加投資資金で安く購入できるチャンス」と捉えることで、心理的な負担を軽減するという側面があります。
しかし、山崎氏はこの考え方は**「投資対象そのもののリスク」**を考慮していない、と述べています。
ドルコスト平均法は、**「時間分散」**によって価格変動リスクを低減させる効果はありますが、投資対象そのもののリスクを低減させる効果はありません。
例えば、S&P500が暴落するタイミングで、一括投資した人とドルコスト平均法で投資した人のどちらが有利でしょうか?
答えは明白ですよね。
S&P500が暴落するタイミングでは、一括投資した人の方が大きな損失を抱えてしまうでしょう。
つまり、ドルコスト平均法は、**「現金のまま保有している時間を長くすることで機会損失を減らす」という効果はあるものの、「投資対象そのもののリスクを低減させる効果はない」**という点が、山崎氏の主張のポイントです。
さらに山崎氏は、**「ドルコスト平均法は平均買いコストに投資家の視点を集中させることで、投資対象が値下がりした時の気休めをあらかじめ提供している投資方法」であり、「ただの気休めだ」**とまで断言しています。
つまり、ドルコスト平均法は**「投資のタイミングがわからないから分割投資している」のではなく、「これから株価が下がると思うから分割投資している」**という心理が働いているケースが多いというわけです。
そして、**「これから株価が下がると思う」ということは、「将来の株価を予測している」**ことと同じです。
しかし、将来の株価は誰にも予測することはできません。
3. バート・マルキール 氏の見解
「ウォール街のランダム・ウォーカー」の著者であるバート・マルキール氏は、インデックス投資家にとってのバイブルとも言える著書の中で、ドルコスト平均法について以下のように述べています。
「ドルコスト平均法は株式投資のリスクを取り除く万能薬ではない」
マルキール氏は、一括投資と比較してドルコスト平均法が常に最適な選択であるとは限らない、と指摘しています。
しかし、**「将来、株価が大きく下落した時に対する保険の役割を果たしてくれる」**とも述べており、ドルコスト平均法にも一定のメリットがあることは認めているようです。
マルキール氏の主張のポイントは、**「株価が安い時に多く、株価が高い時に少なく投資できる」**という点にあります。
つまり、ドルコスト平均法は、**「結果的に市場の平均株価よりも低い価格で購入できる可能性が高くなる」ため、「市場が長期的に上昇トレンドにある」**という前提に基づけば、一括投資よりもドルコスト平均法の方が有利になる可能性が高い、というわけです。
4. JL コリンズ 氏の見解
「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」の著者であるJL コリンズ氏は、ドルコスト平均法について本書で以下のように語っています。
「ドルコスト平均法を採用したあなたは、市場が下落して痛みを経験してくれる方に賭けている」
コリンズ氏は、アメリカの株式市場が1970年から2013年の43年間のうち、33年間は上昇していたというデータを根拠に、ドルコスト平均法は**「分割投資のたびに、より多くのコストを支払うことになる」**と指摘しています。
つまり、ドルコスト平均法で投資することは、**「一度に投資するには市場の水準が高すぎると考えている」のと同じであり、「市場のタイミングをうまく捉えたい」**という曖昧な考え方に基づいている、というわけです。
そして、**「ドルコスト平均法は、株式投資のリスクを取り除く万能薬ではない」とマルキール氏が述べているように、ドルコスト平均法には「長期的に見るとリターンが低くなる」**というリスクも存在します。
コリンズ氏はこの点について、以下のように述べています。
「ドルコスト平均法を採用することは、市場が下落して痛みを経験してくれる方に賭けているようなものだ」
「どの1年間をみても、あなたの思った通りになる確率は23%以下、77%超の確率で市場は上昇する。その場合、ドルコスト平均法では得られる利益が減少する」
つまり、ドルコスト平均法は、**「短期的な下落リスクを抑える」という点では有効ですが、「長期的なリターンを最大化させる」**という点では、必ずしも最適な選択とは言えない、というわけです。
そして、コリンズ氏はドルコスト平均法について、以下のように結論づけています。
「ドルコスト平均法で投資をすることは、一度に投資するには市場の水準が高すぎると考えているのと同じだ」
「つまり、市場のタイミングをうまく捉えたいという曖昧な世界に足を踏み入れているのだ。それでは、結局負けてしまうだろう」
結論:一括投資が合理的だが、無理は禁物
4人の専門家の見解をまとめると、以下のようになります。
- 一括投資の方が合理的
- 投資タイミングは基本的に読めない
- ドルコスト平均法は「ただの気休め」
つまり、投資タイミングは誰にもわからないため、**「今が最も割安なタイミング」**と考えて、リスク許容度の範囲内で一括投資するのが合理的というわけです。
しかし、投資初心者にとって、一括投資は精神的な負担が大きいため、無理強いはできません。
投資開始直後に暴落が来てしまうと、
- 「学長が紹介してたファンドなのに全然ダメじゃん…」
- 「学長が一括投資でいいって言ってたのに、投資タイミング読めてないじゃん…」
といったように、**「投資のプロ」に対する不信感や、「自分自身の投資判断」**に対する後悔の念を抱いてしまい、投資から遠ざかってしまう可能性があります。
そのため、投資初心者の方は、**「ドルコスト平均法でコツコツ積み立て投資しながら、投資の経験を積んでいく」**という方法も有効な選択肢と言えるでしょう。
投資初心者は「積み立て投資しなはれ」
とはいえ、投資の世界では**「時間」**が非常に重要です。
投資を始めるのが早ければ早いほど、複利効果によって資産が増えていく期間も長くなります。
そのため、**「投資を始めるタイミング」でいつまでも悩んでいては、「機会損失」**が大きくなってしまう可能性があります。
投資で最も大切なのは、**「継続すること」**です。
仮に投資開始直後に暴落が来て損失を抱えてしまったとしても、
「どうせ15年後にはプラスになってるんでしょ?どうでもええわ」
といったように、長期的な視点で投資を捉えることができれば、一時的な損失に一喜一憂することなく、冷静に投資を継続できるはずです。
そして、リスク許容度の範囲内で、できるだけ早く投資を始め、長期的に投資を継続していくことが、資産形成を成功させるための最も重要なポイントと言えるでしょう。
まとめ|投資初心者こそ一括投資を検討してみよう
今回は、投資初心者の方に向けて、一括投資と積み立て投資のどちらを選択すべきか、専門家の意見を交えながら解説しました。
投資タイミングは誰にもわからないため、理論的にはリスク許容度の範囲内で一括投資するのが合理的です。
しかし、投資初心者の方は、一括投資の精神的な負担を考慮して、ドルコスト平均法で積み立て投資しながら投資に慣れていく、という方法も有効な選択肢と言えるでしょう。
ただし、投資で最も重要なのは**「継続すること」**です。
投資を始めるタイミングでいつまでも悩んでいては、**「機会損失」**が大きくなってしまう可能性があります。
そのため、**「リスク許容度」と「感情面」のバランスを考慮した上で、「自分にとって最適な投資方法」**を選択することが大切です。
今回の記事が、皆さんの投資判断の参考になれば幸いです。
みなさまに選ばれてNo.1