急激な円高で資産が減っている…これから投資はどうすればいいの?
2024年7月前半には一時1ドル162円台と歴史的な円安水準を記録したドル円相場ですが、
8月に入ると一転して円高が加速。
わずか2週間強で13円も円高が進み、1ドル148円台を突破しました。(2024年8月1日時点)
この急激な円高の背景には、日銀による17年ぶりの利上げや、アメリカでのFRBによる今後の利下げ観測など、
様々な要因が複雑に絡み合っています。
円高になると、ドルベースで見た資産価値が減少するため、新NISAで投資を始めたばかりの方の中には、
- 「資産が溶けていくようで不安…」
- 「積み立て投資を停止した方がいいのか?」
- 「保有している投資信託を売却した方がいいのか?」
といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか?
結論からお伝えすると、長期的な視点で資産形成を目指すのであれば、円高局面でも積立投資を継続することが重要です。
本記事では、新NISAにおける円高の影響 や 円高時の正しい投資行動 について、図解も交えながらわかりやすく解説していきます。
この記事を読めば、円高状況でも落ち着いて投資を継続するための知識を身につけることができます。
ぜひ最後まで読んで、今後の投資戦略に役立ててください!
なぜ急激に円高になったのか? いつまで続く?
2024年8月現在、ドル円相場は急激な円高に見舞われています。
わずか2週間で13円近くも円高が進んだ背景には、以下の2つの大きな理由が挙げられます。
急激な円高の理由①:日本が17年ぶりに利上げ!
2024年7月31日、日銀は金融政策決定会合において、政策金利を0.25%引き上げることを決定しました。
これは、実に17年ぶりの利上げとなります。
長期にわたる低金利時代の終焉か?
日本は1990年代後半からデフレ経済に苦しみ、長らく低金利政策を続けてきました。
しかし、2023年以降、世界的なインフレの影響を受けて日本国内でも物価が上昇。
賃金も上昇傾向にあり、日銀は景気回復の兆しが見られると判断 し、今回の利上げに踏み切りました。
日銀が利上げに踏み切った理由とは?
日銀が利上げに踏み切った背景には、以下の2つの要因が考えられます。
- 物価上昇への対応:2023年以降、日本の消費者物価指数(CPI)は上昇傾向にあり、日銀は物価上昇を抑制するために利上げを行いました。
- 景気回復の兆し:賃金上昇や企業収益の改善など、景気回復の兆しが見られることから、日銀は利上げを行っても経済に大きな悪影響はないと判断しました。
利上げは良いことばかりではない?リスクも存在する!
利上げは、物価上昇の抑制や景気回復の促進といったメリットがある一方、以下のようなリスクも孕んでいます。
- 住宅ローン金利の上昇:日本では、住宅ローンの多くが変動金利で組まれているため、利上げによって住宅ローン金利が上昇し、家計負担が増加する可能性があります。
- 個人消費の冷え込み:利上げによって住宅ローン金利や借入金利が上昇すると、企業の投資意欲や個人消費が減退し、景気が悪化する可能性があります。
日銀は難しい舵取りを迫られている!
日銀は、物価上昇の抑制と景気回復の維持という、相反する2つの目標を達成するために、今後も難しい舵取りを迫られることになります。
急激な円高の理由②:アメリカの利下げ観測が強まる
7月31日のFOMC後のパウエル議長の発言を受け、市場ではアメリカが9月にも利下げに転じるのではないか という観測が広がっています。
アメリカの利下げ観測が強まった背景とは?
これまでインフレ抑制のために積極的な利上げを続けてきたアメリカですが、ここに来てインフレがピークアウトした可能性も示唆されており、利下げ観測が強まっています。
具体的には、以下の経済指標が利下げ観測の要因として挙げられます。
- 消費者物価指数(CPI)の鈍化:アメリカの消費者物価指数(CPI)の上昇率は鈍化傾向にあり、インフレがピークアウトした可能性が示唆されています。
- 雇用統計の悪化:アメリカの雇用統計は悪化しており、景気後退懸念が高まっています。
利下げが行われると、なぜ円高になるのか?
アメリカで利下げが行われると、日米の金利差が縮小し、ドル売り・円買いが進むため、円高になる可能性があります。
金利は、お金を借りる際のコストを指します。金利が高いほど、お金を借りるコストは高くなり、投資家はより高いリターンを求めて金利の高い国の通貨に投資する傾向があります。
逆に、金利が低い場合は、投資家はより高いリターンを求めて金利の高い国の通貨を売却し、金利の低い国の通貨を購入する傾向があります。
円高はいつまで続く?今後の見通しは?
円高がいつまで続くのか、断言することはできません。
今後の日米の金融政策や世界経済の動向によって大きく左右されるためです。
円高が継続する可能性はあるものの…
現時点では、日本は追加利上げの可能性を示唆している一方で、アメリカは利下げの可能性を示唆しており、日米の金利差は縮小傾向にあります。
このため、中長期的には円高基調が続く可能性も考えられます。
一方で、円安に転じる可能性も!
ただし、アメリカの利下げペースが予想よりも緩やかになったり、世界経済が再び減速したりするなど、予期せぬ事態が発生すれば、円安に転じる可能性も十分に考えられます。
今後の為替相場の動向から目が離せない!
このように、今後の為替相場の動向は不透明な要素が多く、予測することは困難です。
常に最新の情報を入手し、状況に応じて柔軟に対応していくことが重要です。
新NISAで円高だと何が問題なの?
円高になると、外貨建て資産の円換算額が減少するため、新NISAで外国株や外国債券に投資している場合は、評価損が発生する可能性があります。
円高が日本株に与える影響とは?
円高は、輸出企業を中心に業績悪化懸念から株価にネガティブな影響を与える可能性があります。
輸出企業の業績悪化懸念
円高になると、輸出企業にとっては、海外で販売する製品の価格が割高になるため、価格競争力の低下や売上減少につながる可能性があります。
また、円建てで受け取る売上金が減少するため、為替差損が発生し、収益を圧迫する可能性もあります。
国内景気の冷え込み
さらに、円高は輸入品を割安にする効果がありますが、国内企業にとっては価格競争の激化やデフレの進行につながる可能性も懸念されます。
一方で、円高メリットを受ける企業も!
ただし、すべての日本企業が円高によって悪影響を受けるわけではありません。
輸入原材料を使用している企業や、海外に事業展開している企業にとっては、円高はコスト削減や収益増加につながる可能性があります。
円高が外国株(S&P500など)に与える影響とは?
円高になると、外国株や外国債券の円換算額が減少するため、評価損が発生します。
為替差損の発生
例えば、1ドル150円のときに購入した1万ドル分の米国株は、150万円で購入したことになります。
しかし、円高が進んで1ドル100円になった場合、保有している米国株の価値は100万円に目減りしてしまいます。
これが、円高による為替差損です。
具体的な事例で解説!
例えば、2022年10月から2023年1月にかけて、S&P500指数は上昇したにもかかわらず、円高の影響を受けて、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の基準価格は下落しました。
- S&P500指数:2022年10月15日の3,583ポイントから、2023年1月17日には3,972ポイントまで上昇(約11%上昇)。
- ドル円相場:2022年10月15日の1ドル148.7円から、2023年1月17日には1ドル127.8円まで円高が進行(約14%の円高)。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):2022年10月15日の1万9,046円から、2023年1月17日には1万8,149円まで下落(約5%下落)。
このように、円高は外国株投資に大きな影響を与える可能性があることを理解しておきましょう。
円高時、どのような投資行動をすれば良い?
円高になると、保有資産の評価額が減少するため、投資をやめようかと考えてしまうかもしれません。
しかし、長期的な視点で投資を行うのであれば、円高はむしろ**「安く買えるチャンス」** と捉えることができます。
円高でも積立投資を継続すべき理由とは?
長期投資においては、「時間分散」 が非常に重要です。
時間分散とは、投資のタイミングを分散させることで、価格変動リスクを軽減する投資手法です。
円高局面では、より多くの口数を購入できる!
円高になると、同じ金額でも多くの口数を購入することができます。
例えば、毎月5万円をドルコスト平均法でeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に積立投資しているとします。
- 1ドル150円のときは、約333ドル分購入できます。
- 1ドル100円のときは、約500ドル分購入できます。
このように、円高のときに積立投資を継続することで、将来的に円安になったときに大きなリターンを得られる可能性が高まります。
長期的な視点で投資を継続することが重要!
短期的には為替の影響で評価損が発生する可能性もありますが、長期的に見れば、世界経済の成長とともに株価は上昇していくことが期待されます。
焦らずに、長期的な視点で積立投資を継続していきましょう。
円高・株安は「リスクとリターン」を理解するチャンス!
投資には、必ず「リスク」がつきものです。
リスクとは、投資した資金が元本割れする可能性や、期待通りのリターンが得られない可能性を指します。
リスクを正しく理解することが重要
投資においては、「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるように、一般的にリスクが高い投資ほど、高いリターンが期待できます。
逆に、リスクが低い投資は、リターンも低くなる傾向があります。
標準偏差でリスクを数値化!
投資におけるリスクは、「標準偏差」 という指標で数値化することができます。
標準偏差とは、データのばらつき具合を示す指標です。
投資の世界では、標準偏差が大きいほど価格変動が激しく、リスクが高いことを意味します。
S&P500を例にリスクとリターンを解説
S&P500を例に、リスクとリターンの関係を見ていきましょう。
過去10年間のS&P500の年率リターンは10.4%、年率リスク(標準偏差)は15.19%です。
これは、68%の確率で、年間のリターンが-4.79%〜+25.59%の範囲内に収まる ことを意味します。
株価の下落は「絶好の買い場」!
2024年に入ってから、S&P500は一時的に5%程度下落する場面もありましたが、これは過去10年間のリスクの範囲内です。
むしろ、株価が下落したときは、長期投資の観点から見ると「絶好の買い場」 と言えます。
【おまけ】住宅ローン金利はどうなる?今後の見通しは?
日銀が利上げに転じたことを受け、住宅ローン金利の上昇が懸念されています。
ここでは、日銀の利上げが住宅ローン金利に与える影響や、今後の見通しについて解説します。
日銀の利上げは住宅ローン金利にどう影響する?
日銀の利上げによって、住宅ローンの金利の指標となる**「短期プライムレート」** が上昇する可能性があります。
短期プライムレートとは?
短期プライムレートとは、銀行が最も優良な顧客に対して貸し出す際の金利の目安となるものです。
住宅ローンの金利は、この短期プライムレートを参考に決定されます。
住宅ローン金利はいつから上がる?
銀行が住宅ローン金利を見直すタイミングは、一般的に年2回(10月と4月)です。
今回の日銀の利上げを受けて、早ければ2024年10月にも住宅ローン金利が引き上げられる可能性があります。
金利上昇による影響は?
仮に、4,000万円の住宅ローンを借り入れしている人が、年0.15%の金利上昇によって受け
る影響は、年間約3万円の利息増となります。
変動金利から固定金利に借り換えるべき?
日銀の利上げによって住宅ローン金利が上昇する可能性があることから、「変動金利から固定金利に借り換えた方がいいのか?」と悩んでいる方もいるかもしれません。
借り換えにはコストがかかる!
住宅ローンの借り換えには、手数料や保証料などの諸費用がかかります。
一般的に、住宅ローンの借り換え費用は、数十万円から百万円程度かかるケースが多いです。
安易な借り換えは要注意!
安易に固定金利に借り換えてしまうと、金利が上昇する前に支払う利息の総額が増えてしまう可能性もあります。
専門家への相談も有効
変動金利から固定金利に借り換えるべきかどうかは、個々の状況によって異なります。
住宅ローンの残高や返済期間、今後の金利の見通しなどを考慮した上で、慎重に判断する必要があります。
ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみるのも良いでしょう。
【円高と株安のダブルパンチ到来!?今後の見通しと資産を守る対策を徹底解説!】
まとめ
今回は、急激な円高が新NISAに与える影響 や 円高時の投資行動 について解説しました。
円高は、短期的に見ると保有資産の目減り感を強く感じやすい状況です。しかし、長期投資の観点 から見れば、むしろ安く購入できるチャンス とも言えます。
重要なのは、「時間分散」 を意識して、長期的な視点で投資を継続していくことです。
焦らずに、コツコツと積立投資を続けていきましょう!
SBI証券がさらに進化!
SBI証券では、2024年7月よりウェブサイトやシステムがリニューアルされ、より使いやすくなりました。
また、2025年にかけては、投資信託の定期売却 や NISA口座での定期売却 にも対応予定です。
まだSBI証券の口座をお持ちでない方は、この機会に口座開設を検討してみてはいかがでしょうか?
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SBI証券※投資にはリスクが伴います。投資する際は、必ずご自身で判断し、自己責任において行ってください。